大阪家庭裁判所 昭和46年(家)1370号 審判 1971年2月23日
申立人 水原進助(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
一 本件申立の要旨
申立人の父水原庄五郎(一五代目)が、昭和四六年一月一六日、死亡したため、申立人において「庄五郎」を襲名することとなつたので申立人の名を「庄五郎」に変更することの許可を求める。
二 当裁判所の判断
戸籍謄本によれば、申立人方においては申立人より少くとも四代前の先代以来いずれも「庄五郎」の名を襲名してそれぞれ家督相続をなし先代「庄五郎」が、昭和四六年一月一六日、死亡したこと、申立人先々代、先代および申立人はいずれも長男であることが認められる。上記認定事実によれば申立人方においては代々長男の地位にあるものが旧法上、戸主として家督を承継しこれに伴つてその名「庄五郎」を襲名してきたものということができ「庄五郎」の名はまさに戸主としての地位を表象するものであつたことが明らかである。しかしながら現行民法においては家督相続を廃し、これに伴つて戸主の地位をも認めなくなつたのであるから、かかる地位を表象する名を襲名することは現行民法の立場とは相容れないものである。もつとも先代の死亡によりその職業を承継するとか、その地方の慣習として世帯の代表者としての呼称のため欠くことができないというような特別な事情があつて襲名をしなければ日常生活上著しい支障を生ずる虞のあるときにはなお襲名のために名を変更することを許すことも考えられるが、本件においては申立人は地方公務員であつて、襲名しなければ日常生活上著しい支障を生ずるものとも考えられない。その他、本件にあつては申立人について名を変更することを必要とするような事情も認められないので、本件申立はその理由ないものとしてこれを却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 中村捷三)